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チェンジリング ◆ Changeling [いんぷれっしょん]

changeling.jpg チェンジリングという題名は「妖精のいたずらによって自分の子供が醜い子供に取り替えられる」というヨーロッパ伝承に基づくとのこと。

 1920年代 ロサンゼルスで起きた事件、実話をベースに、ここまで完成された素晴らしい作品を作り上げたイーストウッド監督と出演者、スタッフに立ち上がって拍手を送りましょう。

 サスペンスを基調に、人権、猟奇殺人と法廷と刑罰、警察腐敗など、数々の社会派の要素もちりばめながら、それらを腕のいいシェフが上質に料理し、最高の娯楽作品に仕上がっています。

 最愛の息子を誘拐され、悲嘆に暮れるクリスティ(アンジー)。一方、その堕落ぶりを常々市民から批判を受けているロス市警は、名誉回復の宣伝好機と捉え、行方不明の子供を保護したとして、本物とは違う別の子供を彼女に押しつけてしまう。母として当然納得できない彼女は、警察批判を行う。 すると、犯罪被害者として守られるべき存在であるにもかかわらす、今度は警察当局に疎まれ、当局の息の掛かった精神病院に強制収容されてしまう。 

 このあたりまでが前半の大筋ですが、あまりに可哀相なクリスティと、あまりに横暴なロス市警の態度、おぞましい精神病院の描写に観客のフラストレーションは最高値に達します。 

 そして後半、マルコヴィッチ扮する人権派の教会牧師、誘拐犯の正体、良心的な刑事、市警の怠慢を糾弾する辣腕弁護士等々の登場によって、事態は急速に好転、締め付けられるような抑圧感は次第に解き放たれて行きます。 観客の心理を熟知し、掴み取る見事な構成ではないでしょうか。 そして、穏やかで、ほの暖かさを感じる素晴らしいエンディング、もう最高の満腹感です。

  私にとっては、早くも今年1~2を争う満足作品となりました。 良い映画作品に共通ですが、このイーストウッド作品も。それぞれの登場者のキャスティング、人物設定に深みがあり、作品全体締まり繋がっていると思います。 PG-12指定されていて、ややショッキングなシーンもありますが、時代考証の観点から、肯定的に捉えたいと思います。

 本作は「ゴードン・ノースコット事件」という当時の有名な連続殺人事件が重要な背景になっています。 そのことを事前に知っていたら、サスペンスとしての楽しみがやや削がれたかなという印象ですが、私自身は幸いにも、事件と作品との関わりについては知らなかったので十二分に楽しめました。 鑑賞前の予備知識を余り持たない主義がいい方に当たった形です。

  イーストウッド作品は、監督・主演作が間もなく公開を控えているので、益々期待が高まります。


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