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イノセントガーデン ◆ STOKER [いんぷれっしょん]

イノセントガーデン.jpg ごく一部を除いて、ストーリーのない映画作品は無い。だから、筋書きの面白さがその作品の魅力を左右する大きな要素であることは間違いないだろう。 しかし、シンプルなストーリーでありながら、そのほかの表現手法でその魅力を高めているものもたくさんある。いわゆる、『スジ・ヌケ・ドウサ』と言われる三大要素の他にも、効果音やBGMは勿論、最近では映像のデジタル化や3Dなどの最新技術なども、過去のセオリーにプラスして捉えることもできるだろう。

 韓国人監督パク・チャヌクの、ハリウッドデビュー作とか。過去作品を見ていないので、私にとっては初めての体験。スリラーをベースに、艶っぽくて美しくて妖艶、サイコでありながらやがて独特の恍惚感まで漂う何とも言えない世界を堪能させてくれた。『スジ』以外の要素がすこぶる魅力的な作品と言えよう。鑑賞前に、予備知識を入れてご覧になる方、全くの白紙で臨む方、いろいろいらっしゃると思うが、本作はある程度作品のテイストを知ってからご覧になるほうが、この独特のタッチをより深く味わえるだろう。でないと、冒頭から1/3くらいの雰囲気を上手に咀嚼できないおそれもあり。

 ミア・ワシコウスカ演ずるインディアは、18歳の誕生日に最愛の父リチャードを事故で失い自失となる。時を同じくしてやってくる、亡き父の弟、美しき叔父チャーリー(マシュー・グッド)。未亡人となった母イヴリン(ニコール・キッドマン)の三人が絡んで、この謎めいて美しくもおぞましき物語が始まる。 

  基本サスペンスタッチなのだが、冒頭に書いたように、その魅力はストーリーの謎解きだけではない。いや、比較的早いタイミングで見えてくる殺人の実行者より、その人物の過去に隠された秘密に関わる謎と、主人公インディアが持つ繊細で特殊な感覚、さらには叔父チャーリーとの出逢いと関わりによって、眠っていたある個性が覚醒するようなプロセス。18歳とは子供から大人への脱皮が始まる頃。あるいは、身体の成長と心の成長がアンバランスをきたす微妙な時間。未成熟を象徴するアイテムとして、卵や繭を直接的間接的に映像表現として多用している。逆に、身体の成熟を表す性的なイメージや直接描写。そして、本作のキモである、インディア、父、叔父の系譜に流れる恐怖の血の真実。さらには、そこから疎外されている、母のメンタリティー。これらをコラージュするように、緩急に富む独特のテンポと描写で、時に流れるように、時に美しき絵画のように魅せてくれるのだ。

 インディアが父から受けた手ほどきによって習得した”狩り”の技術。その腕で仕留めた大物を残し、更なる獲物を求め、広い世界に足を踏み出す。 叔父のインディアに対する長年の異常な執着と、それに呼応する彼女の性格。同じ血と言うだけでは説明が足りない二人の間に残る謎と、母と娘の異常な確執など、きっちり回収されきらないことで残るもやもや感も、もしかしたらこの作品で狙ってる魅力のひとつだとしたら、ちょっとすごい。

 ある作品との出逢いがきっかけで、その作家の過去作品に遡ることって結構多い。私にとってのパク・チャヌクはそうなることは間違いないだろう。韓国映画の空気って実はそんなに好きじゃないけれど、評価の高い『オールド・ボーイ』(03)『渇き』(09)などは今すぐにでも見たいと強く思った。そして、それらに接する前の現時点で、この監督のハリウッド進出は大成功していると言いたい。次作も楽しみだ。

2013/06/20 TOHOシネマズららぽーと横浜にて


なんか、ジャケットだけでもフツーじゃなさそうなパク・チャヌクの世界。ドキドキ。

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