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トータル・リコール ◆ Total Recall [いんぷれっしょん]

トータルリコール.jpg 20数年ぶりに同窓会開催の知らせを受け取ったとしよう。かつて憧れたクラス一の美人にまた会えるチャンスだ。記憶に残るその娘はミステリアスで清楚、想像しただけでときめくココロは抑えられない。そして待ちに待った当日、期待に胸躍らせながら再会した目当てのその娘は、長い時を経て全く違う女性に変わっていた。その美貌には磨きがかかり洗練され、まばゆいばかりに輝いているのだが、かつてほのかに思いを寄せた純真なイメージとはかけ離れていた。さあ、その事実をどう受け止めるか? 胸に仕舞ってあった美しい記憶を踏みにじられたと嘆くか?あるいは、時流に乗り美魔女化した元同級生を肯定し、新たなドキドキワールドへ突入するのか?

 1990年シュワちゃん主演で作られたSF大作が、現代風に生まれ変わって再び作られた。リメイク作品を目にする毎に複雑な思いに駆られるのだが、本作は前述比喩のごとく、同じ原作を下敷きにしているとは思えないくらい全くの別作品に仕上がっている。新たな作り手のセンスを肯定するか、拒否するか・・・。

 新作では、大前提となる舞台が全く違っている。地球と火星だったものが、富裕層の生活圏イギリス周辺地域ブリテン連邦と、労働者階級が暮らすオーストラリア大陸コロニーに。この遠く隔てられた2カ所を行き来するのが、地球の中心部を貫いて作られた巨大エレベーターのような乗り物というからスケールがでかい。地球の裏側に位置して、かつての宗主国と植民地だった場所を舞台に、二極化を強調するあたりは、現代に於いて、もはや揺るぎなく固定された感のある格差の反映だろう。クエイドが、ハウザーだったころに自分で預けた札束に描かれた肖像に、意外な人物が使われているのもちょっと驚いた。

 そして、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」に挑むかのように、主人公の存在自体が実在なのかどうかさえ怪しまれる余韻が残る前作。そんな、哲学的にも思えるアプローチとは全く違い、ど派手なアクションを中心に据えて、息をもつかせぬまま一気怒濤に見せるスタイルはあまりに潔く、ここまでやってくれるのならもう何でも許そう・・という気持ちにさえなれる。特に主人公クエイド(ハウザー)が逃げ回る、コロニーの巷のデザインはかなり凄く、あの、「ブレードランナー」にも重なる無国籍で退廃的なイメージは、見応え十分だ。

  人格形成の重要なファクターが、遺伝的要素と後天的な経験の積み重ねだというのは否定できないだろう。だとすると、この物語の大前提になっている人の記憶の書き換えというリコール社が提供する架空の技術は、捕えようによってはとても重い。映画の中では、まるでジャンキーのような労働者達の、一時的現実逃避ツールとして扱われているが、この技術を有効に運用するなら、軍事的な侵攻など不要、支配者層にとっては都合の良い従順な人間ばかりのコミュニティーを作ることも可能になるのではと考えてしまう。

 まあ、本作ではその辺の深読みじみたことはほとんどすっ飛ばしているので、娯楽性の高いイメージの中で、社会派的部分を隠し味として楽しみながら、純粋なエンタメとして受け入れるのが良いと思えるのは前述の通りだ。あの「二週間」オバサンや、おっぱい三個のお姉さんの登場にはにやりとさせられるし、数段パワーアップした、クエイドのお目付役奥サマの凄さしつこさには、ひたすら脱帽するばかりだ。おぉ怖い。

 で、今回も最後に思ったのだが、もし自分にお望みの記憶がもらえるとしたら、何を希望するのだろうか? それについてはいろいろ考えたのだが、ここにはとても書けません。

2012/08/16 MOVIX橋本にて


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