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パシフィック・リム ◆ Pacific Rim [いんぷれっしょん]

 パシフィックリム.jpgシネコンの薄暗い通路に立つ、やたらとでっかい広告パネルに描かれた巨大ロボットを目にして「ん?何これ?スゲーかっこよくね?」などと、イマドキ若者風の感想を持ったのはいつ頃だったろうか?ロシア、中国、オーストラリア、アメリカ、そして日本。太平洋を囲む国々で作られた巨大なロボット達が、人類を襲う脅威と戦うのだというコピーには、理屈抜きで心トキメクものがあった。そして、超ド迫力の予告編を見始めた頃、そのコーフンバロメーターは危険なレッドゾーンに突入してきたのである。

  高度成長期以降に育った世代の男子(女子にもいるかな)は、ほぼ間違いなくテレビや映画で巨大なヒーローと怪獣の戦いを目にしているはず。ウルトラシリーズやマグマ大使、ジャイアントロボ、そして映画館の大スクリーン狭しと暴れるゴジラやガメラに胸躍らせた記憶を共有していると思う。しかし、やがてアニメの隆盛に押されたこと、製作費が足かせになったことなどから、実写特撮のヒーローや怪獣達を目にすることが少なくなり、映画の世界においては、ほぼ絶滅したと思われていた。それが何と、ハリウッドのセンスと資金力で制作された作品が登場するとは、何という嬉しいサプライズ。おまけに、監督が自ら「オタク外国人」と公言しているギレルモ・デル・トロということであれば、期待値の上昇は天井知らず。

 基本的には大満足という感想である。当たり前だ、日本生まれのアイデアと伝統をベースに、パイオニアたちへのリスペクトを込めたデル・トロ監督からのラブレターと称される作品である。怪獣バトルの洗礼を受けた人間にとって、この世界観は堪えられない。KAIJYU(怪獣)とイェーガー(人類が作った巨大ロボ)の戦いは、かつての東宝・大映や円谷プロの作品と同じ、都市のど真ん中でのぶん殴り合いが基本。おまけにほとんどが夜ときているから、その雰囲気は「お~昔のまんまやんけ~」と、なぜか関西弁になってしまうくらいのワクワクものなのである。

 この際、どれくらいワクワク・ドキドキできるのか証明するために、好感度高いとして揚げられる点を列挙してみるとする。その1=地球規模の危機という設定なのに、国家や各国の正規軍隊は早々に表舞台から去ったことにしてしまい、 『環太平洋防衛軍』というイェーガーバトル専門の部隊に代理戦争をさせるという、シンプルな話しにしたところ。これはお約束の地球防衛軍まんまじゃないですか~? その2=他のデル・トロ作品にも共通点があるのだが、変に大物俳優を使っていないから他の作品とのイメージが重ならない。つまり主役は巨大ロボットと敵の怪獣であり、乗り組むパイロットに過度な人間ドラマをさせていない。その3=日本製アニメにありがちな、妙な萌えキャラが混ざっていないから、登場人物のほぼすべてが徹底的にタフな戦闘モード100%の人物ばかり。よって、チープなロマンスでストーリーテンポを緩ませられることがない。その4以降=怪獣とイェーガーメカのクールなーデザインや、イェーガーと二人のパイロットが「ドリフト」と呼ばれる通信手段で一体化するという設定も、日本の正統なDNAだぞ。 そしてロボットの主役「ジプシーデンジャー」で主に見られるのだが、パイロットが搭乗した頭部が身体と合体し、その後基地から出撃するまでのギミックには、思わず「かっけ~!」と叫びたかった。もう、おじさん、大満足~なのである。そして、忘れちゃいけないのが、戦闘担当の他に、科学部門担当の二人のキャラを置いていて、ややご都合主義にも見える設定ながら、敵の核心を探るヒロイックな活躍をさせたのも注目点だ。地球防衛軍には、頭脳担当が必ずいたよね。

 かように胸のすく出来映えであるのだが、あまり諸手を挙げてばかりだとレビューとしてつまらないので、最後に少しだけ突っ込みを差し上げておくとすれば、以下のような点にはやや苦笑いが出たのも確か。あの巨大なロボットを動かす動力源はいったい何なのか?60個の動力駆動していると説明されていたが、それは電力ってことかいな? まさか内燃機関じゃないよね?やっぱ蓄電?だとすると初代ウルトラマン並の活動時間しか期待できないんじゃなかろうか?どうやら原作本があるようなので、その辺を紐解いてみれば答えが書いてあるのかも。 一方、ロシア製チェルノ・アルファは、頭の部分に核分裂炉を積んでいると言っていたと思うが、そんなものが肉弾戦するとはあまりに危険すぎでしょ~? 漏れた汚染水が飛び散って、すぐに大騒ぎになり、反核デモがすぐに起きそうだ。また、一説によると、イェーガーの重量は2000~2500トン余りとか。そんな重量物が都市を歩いたら、多分アスファルトにめり込んでしまって、歩行困難になるんじゃなかろうか・・・とは、「空想科学読本」の柳田理科氏に解説願いたいところだ。 ストーリーの後半、ジプシー・デンジャーが羽の生えた怪獣に掴まれ、相当の高度から落されるというシークエンスがあったが、重量2000トンの地上戦専用メカが無事着地し、パイロットも無傷というあり得ない強靱さについてはいかがなものか? そして大人目線でわき起こる最大の疑問点。イェーガーを維持し、戦闘させるために膨大な人的資源と資金が投入されているはずであり、事実そのように描かれている。国家の税金が投入されない状況で、天文学的と想像される財源はいったいどこから来ているのか?等々。

 とか何とか言っても、荒唐無稽でリアリズムとは無縁のお話に、最新の技術と資金を惜しげなく投入するとというスタンスに、男はひたすら萌えなのでる。コーフンするのである。冷めた目線はひととき忘れて、ガキんちょの心に戻ってみれば、それは至福の時であるはず。 子供の頃テレビや映画に影響されて夢中になった怪獣ごっこ、唐草風呂敷を首に巻いてのヒーローごっこ。それが、興味の対象はいつの間にか、野球サッカーなどの人気スポーツやロンゲ金髪&サイケメイクのロックバンドになったり、でっかい排気音を轟かせる二輪車へ。そしてやがてはミニスカートを穿いた同級生の少女に移ったりするのが男子の正しい成長過程だとすれば、パシフィック・リムがもう一度いざなってくれた懐かしい世界を、暗い劇場のでっかいスクリーンの前で、あの当時の気持ちになって手に汗握ってみるのも素敵だと思うのである。是非とも続編を作ってもらいたい。そしてそれを後押しするためにも、劇場スクリーンのスーパー音響で見てもらいたい。可能であるなら、制作時に最適化されているというIMAXシアターで。

2013/8/10 109シネマズグランベリーモールにて

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